木材を使った家具のデザインコンペ2017 金賞
共同作成者:松井大輔 (Atelier koma 一級建築士事務所)
家具は、椅子やテーブルなど、日常生活を豊かにするために用いられる「道具」としての役割や、加工の精度や表情の豊かさなど「造形」としての役割を持つが、その役割を超えることに興味がある。
とある突板の製造工場へ行ったとき、丸太から切り出されたフリッチの端部が廃材として積まれていた。フリッチは、突板をつくる過程で生まれる製材で、突板の柾目や板目を表現するための結果としてできる多様な6角形形状をしている。突板の材料となるほどの濃密な木目を呈していて、木材としての質も高い。さほど手を加えずとも、使い手が腰かけたり、テーブルにしたり、踏み台にしたりと、道具としての役割を発見することができるし、その六角形の表情は、廃材の中でも飛びぬけた造形的魅力を持ち合わせ、宝石のように見える。にも拘わらず、大多数のフリッチは焼却される末路を辿る。
このフリッチに、道具としての役割を超えて、新しい価値を与えることが出来ないだろうか。
そこで、個性豊かな六角状のフリッチを、ぱらぱらと点在させた場を考えた。ここでは造形的視点の役割しか発見できなかったフリッチは、群として集まることで、突板となる過程を逆再生するように、あたかも生まれ育った森をトレースしたような表情を得る。道具や造形としての役割を超え、木材を使った家具が森の恩恵によって生まれたことを物語る、手紙のような価値をもったフリッチの集合は、木材を使った家具の語り手である。
木材を加工するだけでは得られない、新しい役割を担った家具を目指した。